執念の筆
棺の中をおそるおそる覗いてみる。意外と綺麗な顔立ちだ。 物心ついた時にはもう母は
棺の中をおそるおそる覗いてみる。意外と綺麗な顔立ちだ。 物心ついた時にはもう母は
毒を手に入れた。 生物の粘膜に微量でも付着すれば心臓麻痺を引き起こす。 しかもそ
この世界は歪んでいる。 なにが真実で、なにが虚偽なのか。 私には目に入るものすべ
コートを羽織り派出所を出たら白の軽自動車が止まり窓が開いた。 「ちょっと付き合っ
私の大切な思い出のひとつ。 お母さんと保育園から徒歩で帰宅中、空に浮かぶ丸い月が
あー。明るいと思ったら満月じゃん。 鈴虫鳴いてるし。もう秋かぁ。
不意に君が呟いた。 「あの頃は良かったね」 宙を見上げる横顔。 何だよ。ただでさ
夏は嫌いだ。 駐車場に敷かれたコンクリート。しばらく手で触れていると、じんわりと
ある夜――。 「月が綺麗ですね」なんて、ふざけたセリフで声をかけてくる男がいるな